ゲール語

ゲール語のテイストを学ぶ その11 日本

貴方(日本人を想定)がアイルランドを旅したら、やたらに「中国人!」、「中国人か?」と言われ、うんざりすることもあろう。

そんなとき、I am a Japanese. と答えれば済む。しかし、このサイトに来てくれた方なら、ゲール語で答えてやろう、と考えてくれたらありがたい。

私は日本人です=Is Seapa'nach me' / イス シャポーナッハ メー となる。

これを英語的な語順とすると、Me' is Seapa'nach .

つまり、私がme' で is がイコールの働き(=)、日本人は、Seapa'nach 。

この場合、それぞれの単語は、なんとなく、英語の知識だけで推測がつく。

語尾の「ch」は、ドイツ語ぽい発音で、キレのある「ハッ」、これかっこいいかも。

じゃ、日本は、シャーパンとか?

だいたい、そう!日本は、Seapa'in /シャパイン、、、だけど、ここからがややこしい。

国名によっては、定冠詞のan がつくことがある。

イギリスなら、Sasana/サーサナでいいのだけど。

では、日本は、An Seapa'in か?

いや、さらにややこしい。

文法の規則により、この場合は、Seapa'in が語頭変化してしまう。

文法によれば、定冠詞 an (英語のthe)の次にSで始まる女性名詞(日本は女性名詞なんだそうだ)が繋がる場合、

語頭に、「t 」をつける。

したがって、日本は、An tSeapa'in 。

読み方は、アチャポーィン。「t」のせいで、「s」の音が消えちゃう。なんだかしまらない名前だが、仕方ない。

日本から来ました、をゲール語にすると、

Is as An tSeapa'in me'. イス アス アチャポーィン メー となる。

as は前置詞で、英語のfrom に相当。

関連する余談を一つ。

僕がホームステイした家族で、なんだか神妙に、ジムくん(小学生の男の子)が僕に尋ねた。

「パディーは中国人なの?」(パディーとは、この家族が僕につけたあだ名である)。

背景的には、このころいろいろ事件があったらしい。

僕の答えは、

「ちがうよ、Land of POKEMON、日本から来たよ」。

「POKEMOooooN!」

ほんと、このときのジムくんの目の輝きは忘れられない。ポケモンってそのまま通じるんだね。アニメのおかげで、なんだか敬意を受けてしまったわけ。

ゲール語のテイストを学ぶ 10 発音

一言でいえば、「勘弁してくれ!」である。そのままの綴りと発音が相当違っている。それなりに規則を持っているが、とても手短に説明なんてできない。だから、一例を挙げてみる。

特に困るものは、A,E,I,O,Uの使い方だ。アエイオウならいいのだが。

英語でも例外は多いが、ゲール語はこれらの組み合わせが多く、また、独特の発音に結びついている。

女性の名前で、「Aoife」さん。ドネゴールの歌手でそういう人もいる(日本でもCD出してる)。

で、読み方。アオイフェさんではない。aoiはこれだけで、イー。

で、答えは、イーファ。

eは語頭の場合、まず、エでいいと思うが、語尾は日本語のアやエに相当する場合がある。te(熱い)は、チェ。

応用その1

naoiの発音は、ヌィー。9という意味。

応用その2

同様に、caoi(やり方)は、クィーだし、faoi(~の下に)は、フィー。

僕の頭の中では、「あおい」は「イー」と憶えている。

ドイツ語ならeiはアイとか、かなり少ない例外を除き、アルファベット表記のままでいけるが、ゲール語はとんでもなくややこしい。

というか、日本語は漢字の読み方があるのでもっととんでもない?

そもそも、ローマ字感覚で、アルファベットのままで読んでいいヨーロッパ系の言語はあるんか?といえば、思いつくのはラテン語。

昔昔、話し言葉しかなかったケルト人たちが、古代ローマ文明との接触により、自分たちの言葉をなんとかアルファベットに置き換えたのだろうね。

だから発音と文字表記のうえでいろいろ例外が生じたのか、、これ勝手な学説。

さらにいえば、ケルト語一般に、言葉の流れ、響きを重視する傾向があるようだ。かっこよく言えば流麗さ。これは、彼らの言葉で聴かせる詩の文化とも関連するだろう。

Aoifeさんは、本来アオイフエさんだったかも知れない。それが、長い年月話される中でさらりとイーファさんになったとか。

ゲール語のテイストを学ぶ 9 クリスマス

寒波が来た。今年のクリスマスは寒そうだ。みなさんも、お体に気をつけて楽しいクリスマスを。

アイルランド・ゲール語の表現の一例。

参考は、「ゲール語四週間」大学書林

Nollaig mhaith dhuit.(ノリグ ワァヒ グイッチ) あなたによきクリスマスを。

もしあなた方なら、 dhuit→dhaoibh(グィーブ)

nollaig がクリスマスのこと。

下の写真は、ちょっとレアな純白サンタクロース。ドネゴールのショーウィンドウで撮影した。雪の妖精みたいだ。

Photo

ゲール語のテイストを学ぶ8 学習書決定版

日本人がゲール語(アイルランド語)を学ぶには?この本が決定版だろう。

「ニューエクスプレス アイルランド語 梨本邦直著 白水社」

アイルランド語には方言しかない(勘弁してくれ)!?

読み方がつかめない(早めにしっかり教えてくれ)!

英語話者を想定した学習書ではぴんとこない!

以上の課題を克服しているのがこの本。日本アイルランド協会の講座を通じて、検討を重ねた優れものである。やっと日本でゲール語学習法がローカライズされたといえる。

かつて僕がコネマラ地方を旅したとき、現地の若者が熱く語ってくれた。

「すごい日本人がいるよ。ゴールウェイ大学でゲール語を学んで、完ぺきに話すんだぜ!」

あれからずいぶん経つ。著者梨本先生がこの日本人に違いない。

ケルト語のフルコース 日仏会館のシンポジウム

日本アイルランド協会から案内通知を受けたので、ご紹介。

題して、「ケルト諸語文化の復興、その文化的多様性の意義を探る」

日程:2011年1月31日(月)、2月1日(火)両日とも10時から

場所:日仏会館
   〒150-0013東京都渋谷区恵比寿 3-9-25

ウェブ:http://www.mfj.gr.jp/agenda/2011/01/31/index_ja.php#1089

恐ろしくマニアックなイベントである。興味のある方はどうぞ。

ゲール語(アイルランド語)、スコットランドゲール語、ブルトン語、ウェールズ語、マン島語、コンウォール語のお話を2日間にわたり、こってり聴くことができるらしい。

もちろん、通訳付き。

詳しくはこんな感じ。

1月31日(月)

10:00-10:05 日仏会館館長あいさつ

10:05-10:10 鹿児島大学代表あいさつ
10:10-10:30 シンポジウム趣旨説明(原聖)
10:30-11:50 ブルターニュにおけるブレイス(ブルターニュ)語文化復興の現状
     (タンギ・ルアルン)
11:50-12:20 コメンテーター(パトリック・ハインリッヒ)と会場からの質疑応答
12:20-13:30 昼食
13:30-14:50 ウェールズにおけるカムリー(ウェールズ)語文化復興の現状
     (メイリオン・プリスジョーンズ)
14:50-15:20 コメンテーター(朝日祥之)と会場からの質疑応答
15:20-15:50 休憩
15:50-17:10 コーンウォールにおけるケルノウ(コーンウォール)語文化復興の現状
     (ダヴィス・ヒックス)

17:10-17:40 コメンテーター(木村護郎)と会場からの質疑応答
17:40-18:00 全体討論
18:00-19:00 懇親会

2月1日(火)

10:00-10:20 前日のまとめと今日の紹介(原聖)
10:20-11:50 アイルランドにおけるエール(アイルランド)語文化復興の現状(ネッサ・ニヒネーデ)
11:50-12:20 コメンテーター(パトリック・ハインリッヒ)と会場からの質疑応答
12:20-13:30 昼食
13:30-14:50 スコットランドにおけるゲール(スコットランド・ゲール)語文化復興の現状
      (ロバート・ダンバー)

14:50-15:20 コメンテーター(木村護郎)と会場からの質疑応答
15:20-15:50 休憩
15:50-17:30 マン島、ノヴァスコシア、パタゴニアにおけるケルト諸語文化復興の現状
     (ロバート・ダンバー、メイリオン・プリスジョーンズ、ダヴィス・ヒックス)
17:30-18:00 全体討論

ゲール語のテイストを学ぶ7 Ta’ の用例

前回、ゲール語(アイルランド語)のBe動詞(存在動詞)の大きな意味を書いた。では、実際の用例は?

英語との比較のため、彼(He)を現在形で記述してみる。

1 かれはジェームズである。He is James.

2 彼は走る。 He runs.

3 彼は走っている。He is running.

4 彼は大きい。He is big.

これをゲール語で書くと、(彼=e'又はSe'、ジェームズはシェーマス)

1 Is e' sin Sea'mas. イス エー シン シェーマス

普通は、もっと簡単に、Sin e' Sea'mas.

2 記述不能、3でいくしかない。

3 Ta' se' ag rith. ター セー エグ リス

4 Ta' se' mo'r. ター セー モール

(解 説)

1 これは例外的にTa'を使わない。A=Bのような使い方だから。そしてTa'はIsに変化。

でも、英語のようにイズとはいわない。ゲール語のSは常に濁らない。

余談を少し、、、英語のジェームズさんは、アイルランドのシェーマスさんであり、ドイツのヤーコブさんでもある。

昔、僕はアイルランドで困った質問を受けた、「おれシェーマス、英語でいうならジェームズだけど、日本ではなんて呼ばれるの?」みなさんはどう答える?

2 来たー!って感じ。ゲール語で一般動詞を使う場合、いわゆる現在進行形の形になる。日本語で彼は走る、なんて言えるけど普通使わないでしょ。考えてみれば、現在起きていることは一連の流れである。今のことを表現するなら、彼、走ってるよ、って日本語でも言うはず。

3 これが深い。直訳すれば、「彼(se')は、走ること(rith)において(ag)Ta'(存在する)」となる。ゲール語の感覚では、とにもかくにも、今存在すると先に言う。で、走っている状況の彼が、と続く。重要なことというか、本質的なことが先に記述される傾向というべきか。

4 形容詞は主語の後につく。ラテン系の言葉を知ってる方ならお馴染み。モン・ブランが山+白いみたいなもの。ただし、Be動詞はとにかく頭に来る。

ゲール語のテイストを学ぶ6 Ta とNilの哲学

英語にはBe動詞があって、この使い方が重要になる。ゲール語(アイルランド語)も同じ。しかし、さらに深い意味がある。本来Be動詞も、存在を表すもの。存在なんていうと、哲学めいてくるけど、ゲール語はもっとそうだ。

英語の副詞、Yes、Noに相当するものは、ゲール語にない。驚きである。替りに、存在を表す動詞Ta(aの上に長音の点)、ターと、Nil(iの上に長音の点)ニールを直接に使う。

バカ丁寧に考えると、

はい(Ta)、とは、現在形でそのような存在があるという意味。いいえ(Nil)、とは、そのような存在はないという意味になる。会話や文章のなかで、こんなことをいちいち考えているとは思えないが、言葉の意味を突き詰めるとそうなる。

言われてみれば、そうだよね。たとえば、彼が走っているかどうかの質問に、はい、といえば、走っている状態の彼が存在しているわけ。

この世の出来事は、みんなひっくるめてTa。実際起きていないことは、Nil。ゲール語の根本には、こんな発想があると思う。

ところで、Taの古い意味は、立つ(stand)だったそうだ。なかなか玄妙である。荒木飛呂彦の漫画、「ジョジョの奇妙な冒険」は、スタンド使いの話であるが、このスタンドとは、潜在的にある力のようなもの。これが、具体的なスタンドとして現れたり、引っ込んだりする設定だ。つまり、今見えなくても、常に可能性として”ある”。

これをゲール語に置き換えると、スタンド使いがスタンドを出しているなら、Ta、引っ込めているならNilに相当するのだろう。そうすると、表面的な在る、無しを超える何かがありそうだ。

ここまで考えると、哲学上の存在論の話になる。

アイルランド出身の哲学者エリウゲナは、こんなぶっ飛んだことを言っている。

神とは、自然である。

神とは、”ある”ことと”ない”ことの全てである。

だから、エリウゲナの思想はキリスト教社会で、異端視されてしまうわけ。でも、こういったユニークな発想の背景には、彼の母国語(ゲール語)があったのでは、と僕は考えている。

ゲール語のテイストを学ぶ5 私のともだち

うちの娘はもうすぐ2歳、使用単語数が急激に増加し、時折二連語も使うようになった。未知の言葉を学ぶには、こんな調子でいけばいい。

この娘のお気に入りは、小鹿のぬいぐるみだ。その名前は、Cara(カーラ)、ゲール語で友だちの意味。自分でもそのように呼んでいる。

ところで、小鹿=小(こ)+鹿(しか)なのだが、日本語では、こかである。そのように発音した方が発音しやすいので、”し”が”じ”になる。英語では文法上こんなことがない。

ところが、ゲール語を含め、ケルト語の特徴は、このような緩音化が規則的に発生する。ある意味、高度な音声言語なのだ。

では、cara(友達)が私の友達だったらどうなるか、mo(私の)+caraは、mo chara(モハラ)となる。

さらに形容詞を付けてみよう、たとえば、小さい、英語の語順では、my little friend、日本語と同じ。ところが、ゲールの形容詞は後につく。小さい=beag(ベアグ)が最後に付き、

mo chara beag となる。ついでにいえば、大きいは、mor (モー)。

以下余談。CCEとは、アイルランドの伝統音楽・ダンスを学ぶ団体であり、日本でも支部がある。

では、Ull Mor CCE とはどこの支部。

ヒント、ull (ウール)はゲール語のりんご。つまり大きなりんご。

ニューヨークのことを、別名Big Apple というので、これは、CCEのニューヨーク支部です。

ベッキー・クルーエルとゲール語(マン島語)

ベッキー・クルーエルは、Manx schoolgirl と英語サイトで紹介されている。本名のRebecca Flint のフリントはマン島系の姓だろうか。

マン島語(Manx)はゲール語の一つであるが、1974年にネイティブの話し手が亡くなって一旦絶滅した。しかし、復興運動でなんとか復活した言語のようだ。そもそも、ケルト語系の感触では、マンは真ん中を意味する(シャレではなく)。つまり、ブリテン島とアイルランド島の中間だから、マン島。

なんとか僕の資料の中からマン島語を発見することができた。

心、cree(クルー)

アイルランドゲール語では、croi(クリー)だからやはりよく似ている。

マン島の公教育でマン島語を学ぶことができるなら、彼女の少しはできるかも。そういえば、ウェールズのシャルロット・チャーチは、ウェールズ語の唄も歌っている。特有の巻き舌がなかなかかっこいい。

ゲール語のテイストを学ぶ4 挨拶一般

Dia duit  ジーア グイッチ こんにちは

Sla’n スラーン さようなら 

Gabh mo leithsce’al ガ モ リスケル すいませんが、、、

Go raibh maith agat ゴ ロー マァーガッド ありがとうございます

Ta’bro’n orm ター ブローン オルム ごめんなさい

ゲール語にはとりあえずつづりに対応する読み方がありますが、複雑です。その他、かなり発音に結びつかないつづりがあります。以上の例は、なんとか日本語のカタカナに対応させましたが、もちろん日本語の発音とはかなり異なります。

少し例をあげてみます。

a は あ でだいたい良いですが、上に点が付くと(a’)、(原則)音を伸ばします。しかし、この場合、日本語の あ と お の中間の音になります。

ですので、上にある 「さようなら」 は、スラーン、でもスローンでも間違いではありません。

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