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2016年6月

ラテン語の世界 その30 Britannia/イギリスの凋落

ブリタニア、つまりイギリスのことだが、古代ローマ人のイメージでは、かろうじて文明の届いている辺境だろう。

だから、ハドリアヌス帝は、城壁をその北部、すなわちスコットランドとの境界近くに築き、ケルト人の侵入に備える必要があった。

イギリスとは、本来、ヨーロッパの野蛮な辺境の地である。古代ローマ人なら、ここに大英帝国の拠点ができるなんて、全く想像できなかったはずだ。

しかし、できた。この地の土人(土着の人々の意味)は、実にギリシャ・ローマの古典を学ぶことに熱心だったが(当然にその言語も)、それは優れた指導者を素質造りに有益だったのだろう。

これは、古典学習と明治維新の関連にも通じるものがある。

が、時代は移り、古典語が軽んじられ、英語が世界共通語?となった。我が国でも、英語ができれば文明人、みたいなことになっている(植民地かょ!)。

そして、21世紀。

歓声とともに、Brexit(イギリスのEU離脱)がなされ、その声は数日で、Bregret(イギリスの後悔)に声変わりしている。

では、ここでEuropa/エウローパさんにインタビューをしてみよう(原文は、ラテン語と古典ギリシャ語)。

「思い上がっちゃだめ!ほらーいわんこっちゃない!あなたたちも、大陸の子どもたちとおなじ私の子どもなのよ。子どもたちが、みな手をあわせて繁栄してくれることを私は望むわ」

では、エウローパさんの略歴ですが、元はギリシャ神話上の王女です。また、後にはヨーロッパそのものでもあります(ラテン語辞書参照)。

おや、まだ言いたいことがあるそうです。

「Scotia(スコットランド)と北部Hibernia(アイルランド)の子どもたちへ、あなたたちの分別を私は讃えます」。

逆説の社会史 その10 イギリス国民投票 統合から解体へ

かつて、ヨーロッパ統合の立役者の一人、ジャック・アタリの講演を聴く機会があった。彼は、いわば開かれた社会の推進者で、日本はもっと移民を受け入れるべき、と力説していた。

これが歴史の趨勢、と感じられる背景もあったが、この21世紀はもっと混沌としたものになりそうに感じる。キーワードは、「壁」。

統合の大きな原動力は、経済発展である。イギリスもEUの一員として、大きな恩恵を得てきたはずだが、投票の結果は、離脱、となった。前日の予想からすれば、大きな驚きとなり、経済の混乱も大きくなった。

直前のアメリカ株式市場と、直後の日本の株式市場の落差を見れば、経済環境の非連続が如実に現れている。

この場合、離脱支持とは、心の在り方だと思う。

自我境界、これは精神分析用語だが、もっと広い「我々境界」なんてものを想定して見ると分かりやすい。

これらの境界が浸食されると、人は不安にかられるものだ。外国人労働力は経済の全体としては数値上+だが、経験の範囲では、続々と増える見知らぬ人たちに自分の仕事が奪われていくと感じる人も多いだろう。

そして、アメリカ大統領選挙、その候補の一人は、文字通り国境に壁を造ろうと言っている。

ところで、スコットランドは強力な残留派だった。では、この人たちは、「我々境界」が薄いのかって話だが、むしろ強固。ただし、イギリス人としてではなく、スコットランド人として。

だから、「我々境界」が侵害される心配より、イングランドよりずっと小さな経済圏としてEUの実利が優先だった、と僕は解釈する。

今回の投票結果によって、彼らに再び独立の機運が高まっている様子だ。それは、連合王国(イギリス)の解体そのものを意味する。

一方、北アイルランド。こっちも、残留派だが、それは紛争の火種がある地域であるから。話せば長い話になるのだが、イギリス系もアイルランド系も同じEUの仲間となれば、対立も緩和できる。

ところが、お互いの本国では別となれば、そうはいかない。イギリス領北アイルランドとアイルランド共和国の間にも、異なる国としてより明確な国境ができるだろう。

歴史に亀裂が入る日、イギリス国民投票が迫る

浮世離れしたこのブログであるからこそ、あえて記事を書く。

ファイナンシャルタイムズ/Financial Times https://next.ft.com/ 

の電子版一面には、離脱をめぐる国民投票の直近世論調査(Latest Polls)が記載されているが、離脱派が1ポイント上回っている(昨日は双方同じ数値だった)。

たとえ、離脱しないにせよ、この背景は深刻である。同様の根は、アメリカの大統領選にもあり、少なくとも”いままでどおりの世界”は、継続しない。

Carpe diem,quam mimimum credula postero

23日朝追記(日本時間):おそらくFT最終世論調査結果 残留47% 離脱45%

ジョージ・ソロスとその哲学 金融界の闇の帝王が復活

久しぶりに、「ヘッジファンド 世紀末の妖怪」浜田和幸 文春新書 を読み返してみた。

なぜならジョージ・ソロスが業会復帰したからである。で、中国の経済崩壊に警告を始め(中国経済に呪いをかけ)、人民日報もむきになって反論を始めている。つまり金融戦争が始まろうとしているのか。

来週の英国のEU離脱是非投票はその引き金になりうるだろう。

彼には、1992年、ヘッジファンドを率い、イングランド銀行に激しいポンド売りを浴びせてこれを屈服させた伝説がある。この勝利の結果、ヘッジファンドの利益は、10億~20億ドルと推定されている。

その背景は、当時の欧州通貨制度の縛りによる金融上の無理(ポンドが高すぎる)がその一つだ。この経緯もあって、ポンドはユーロに統合されていない。

そして1997年、タイのバーツ売りに始まるアジアの通貨危機も彼の仕業である。

この様子を見ると、今の人民元の現状はよくにている。

ただボロ儲けするだけではなく、彼には哲学がある。その哲学者カール・ポパーの思想である。彼はその直系で学んでいる。

カール・ポパーは、科学哲学の分野で知られているが、反面、全体主義の政治思想を徹頭徹尾反駁する政治性を持ち合わせている。

その代表的な著書は、「開かれた社会とその敵」。これが若きジョージ・ソロスのバイブルであった。彼の得た収益は、独裁的な国家の民主化運動家に流れているそうだが、その受け皿の名前は、「オープンソサイエティ財団」、そのまんま、だ。

統制的な経済が生み出す矛盾を突く、これがかれの投機手法の基本だが、共産党が主導する資本主義なんて彼が心情的に(かつ、利益的に)ほっておくわけがない。

実は、カール・ポパーの信奉者は、日本経済の中枢にもいる。在学中試しに司法試験を受け、合格するなどしたが、結局、その筋には関心がないらしく金融道に入り今は日銀総裁してる。

黒田総裁はちゃんと、カール・ポパーの政治思想を翻訳してもいる。その本は、「歴史主義の貧困」。これは、ただの余芸なのだろうか。

彼の金融政策とポパー主義者であることがどのようにかみ合っているか、そもそもいないのか僕にはわからない。

ただ、気になることがある。前回のサミットの会議で、うちの首相がリーマンショック並みの金融危機の到来を訴えていたが(冷ややかな受け止めとともに)、その程度はともあれジョージ・ソロスなら合意するだろう。

安倍首相の見解が、単なる消費税増税先延ばしの理由づけならよいが、黒田総裁も絡んでいるとしたら穏やかではない。

で、庶民的には、来週の英国イベントである。嵐が来るのか来ないのか。数値的には、ポンド価格、日経平均は当然だが、人民元、円、金(きん)とか、普段経済の関心のない人も、気にしておいたらいいと思う。

ついでに、日本では特段の信頼が置かれている預金・現金とはあくまで金融資産であることを再確認してみよう。

逆説の社会史 その9 株式会社と大学制度改革

法人ってある意味で虚構の産物である。法務局に形式的な登記をすれば、書類審査だけで「生まれる」。自然人とは全く違う「人」である。

でも、法人、特に株式会社の社会的影響力は莫大だ。この活動が、すなわち経済活動が社会の趨勢を決めている。

大学生の就職活動とは、大体の場合、法人に雇用される労働者になることを意味する。どれがブラック企業、とか風評に翻弄されるより、会社法(979条あるぞ)に一般労働者のことは一行も書かれていないことをわきまえよう。

でも、大学生たちは、どれだけこの「人」たちのことを知っているのだろうか?こいつらが人生を決めちゃうわけなのに?法学部法律学科でも、会社法は、通常は選択科目だろう。

大学制度改革をめぐる議論では、あろうことか、この分野、すなわち社会科学を非常に軽んじているが、これって”知的野蛮”(社会学者:P.バーガーの言葉)というべきである。

法人との関わり方は、社会生活上の基本的素養だと思う。今まで通りの教え方、学び方がよいとは全然思わないけど。

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