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逆説の社会史 その10 イギリス国民投票 統合から解体へ

かつて、ヨーロッパ統合の立役者の一人、ジャック・アタリの講演を聴く機会があった。彼は、いわば開かれた社会の推進者で、日本はもっと移民を受け入れるべき、と力説していた。

これが歴史の趨勢、と感じられる背景もあったが、この21世紀はもっと混沌としたものになりそうに感じる。キーワードは、「壁」。

統合の大きな原動力は、経済発展である。イギリスもEUの一員として、大きな恩恵を得てきたはずだが、投票の結果は、離脱、となった。前日の予想からすれば、大きな驚きとなり、経済の混乱も大きくなった。

直前のアメリカ株式市場と、直後の日本の株式市場の落差を見れば、経済環境の非連続が如実に現れている。

この場合、離脱支持とは、心の在り方だと思う。

自我境界、これは精神分析用語だが、もっと広い「我々境界」なんてものを想定して見ると分かりやすい。

これらの境界が浸食されると、人は不安にかられるものだ。外国人労働力は経済の全体としては数値上+だが、経験の範囲では、続々と増える見知らぬ人たちに自分の仕事が奪われていくと感じる人も多いだろう。

そして、アメリカ大統領選挙、その候補の一人は、文字通り国境に壁を造ろうと言っている。

ところで、スコットランドは強力な残留派だった。では、この人たちは、「我々境界」が薄いのかって話だが、むしろ強固。ただし、イギリス人としてではなく、スコットランド人として。

だから、「我々境界」が侵害される心配より、イングランドよりずっと小さな経済圏としてEUの実利が優先だった、と僕は解釈する。

今回の投票結果によって、彼らに再び独立の機運が高まっている様子だ。それは、連合王国(イギリス)の解体そのものを意味する。

一方、北アイルランド。こっちも、残留派だが、それは紛争の火種がある地域であるから。話せば長い話になるのだが、イギリス系もアイルランド系も同じEUの仲間となれば、対立も緩和できる。

ところが、お互いの本国では別となれば、そうはいかない。イギリス領北アイルランドとアイルランド共和国の間にも、異なる国としてより明確な国境ができるだろう。

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