ラテン語の世界 その29 Dum Spiro Spero、命と希望
Dum Spiro Spero /ドゥム スピーロー スペーロー
国際性を掲げる私立小学校の広告に、この言葉をモットーとしたエンブレムがあったので書く。
それっぽく、訳せば、”命ある限り希望がある”。むしろ、ホスピス向きかな。
限界状況にある人を励ますような意味だ。
直訳では、
私が息をする間、私は希望を持つ。
内訳は、
Dum/~の間(接続詞)、Spiro/息をする(動詞)、Spero/希望を持つ(動詞)
主語はどこにもないけれど、動詞の変化形で、一人称=私が主語と決まる。
日本語のように、主語をあいまいにできない。
この表現は、良く知られたもののようだけれど、文法的に簡単な応用をしてみよう。
たとえば、私→私たち、貴方とか換えるにはどうしたらいいか?
①Spiro、Speroは、一人称現在なので、幸い、辞書にそのまま記載されている。
②辞書を引くと動詞の「不定形」を突きとめることができる。
③不定形を突きとめると、どんな変化パターンの動詞なのか判明する。
④特定の変化パターンに従ってその語を変化させる。
謎解きみたいな手続だが、これがラテン語の世界。現在形ならこれで済むけど、過去形が三種類あったりするので実に複雑。でも、その変化形は美しいほどに整然としている。
Dum Spiras Speras/貴方に命ある限り、貴方は希望を持てる(希望を失ってはならない)。
二人称型でかっこよく決めるとこんな感じかな。
ところで、辞書を引くって義務教育で学ぶよい習慣なんだ。
Spiro/息をする、Spero/希望を持つを引けば、同じ言葉の別な意味に出会うこともあれば、呼吸や希望といった名詞にも出会うことができる。
Spiroには、霊感を受ける、詩を作るの意味もある。これは、興味深い世界観を想定させるものだ。
名詞としてSpiritus(スピーリィトゥス)/呼吸は、命や精神の意味もある。
それは英語のSpirit、Spiritual の明らかな語源と分かる。
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