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八丈島紀行その5 流人たち

遠島とは、江戸幕府の定めた刑罰の一つ。死罪に次ぐ重罪である。とはいえ、現在の刑法での死刑と無期懲役の違いみたいなものか、とは必ずしもいえない。犯罪の重大さや責任の重さの程度で決まるというより、事件の質の違いや政治的配慮が勘案されていると考えられる。遠島といえば、八丈島が有名だが、江戸からは他の伊豆諸島にも送られていたようだ。

八丈島への遠島の最初は、関が原の戦いの敗将、宇喜田秀家。息子と家来付きである。まさに政治的な刑罰といえる。赦免されるのは、明治維新後のこと。当然本人はとっくに亡くなっているが、一族単位で遠島されていたと考えればいい。

もう一人名高い流人がいる。それは、近藤富蔵。この人、偉大な探検家近藤重蔵の息子である。近藤重蔵といえば、日本の北方領土の画定に功績を収めた人であるが、一途で妥協しない性格もあって秩序を重んじる幕府の中ではトラブルが多かった。

その息子、富蔵は父に良く似ていたようだ。一言でいえば、極端な行動に走る性格。だが、学識もすごかった。

訴訟に負けた腹いせに嫌がらせをする相手方家族を7人殺害って、事情もあるだろうが大量殺人犯である。この暴挙に対して幕府は温情判決?富蔵は遠島となった。

そこで父譲りの探険家の血が燃え上がったのだろうか。八丈島の調査・研究を「八丈実記」として膨大な書物としてまとめ上げた。

今回の旅では、民俗資料館でいろいろ勉強させてもらったが、「その点につきましては、八丈実記第○巻をお読みになるとよろしいでしょう」とか、担当者にご指南いただいた。今も研究対象となりうる民俗学的文献なのだろう。

今の感覚でいえば、”ごく普通の”犯罪者もいたわけだが、その他、遠島対象として、「女犯僧」という人たちがいた。つまり、漢字そのままなのだが、寺持ち(住職)が条件。幕府では、僧侶の性交渉まで取り締まっていたというわけ。そこまでする社会的理由を考えても面白い。

当時の僧侶といえば、それなりの権威、学識もあったろうから、「犯罪者」といってもかなり毛色が違っていただろう。

こういったユニークな人材の多くは、赦免されることもなく八丈島の土になっていった。それまでの間、さまざまな文化的影響を残していったことは想像に難くない。

最後に富蔵のこと。1876年、イギリス外交官アーネスト・サトウの訪問を受けるなどしていたが、明治政府の手違いで(今の年金記録問題みたいなものか)、赦免は1880年となった(明治13)。

江戸ではなく、東京に帰った富蔵だったが、関西方面で父の墓参などを済ませたのち、なんと八丈島に帰島、観音堂の堂守をして一生を終えた。

元幕臣がいまさら江戸(すでに東京)に帰ってもやることがないので第二の故郷に住む?って理解可能だが、本人なりに思うところがあったのだろう。公に許されても、それで済む問題じゃない、とか。

経歴を見ると、「ケジメをつけるのは自分自身」こういった思考方法をする人のように感じる。性格論的にも興味深い人物である。クレッチマーの性格類型など参考になりそうだ。

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