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アイルランドの歌 Mo Ghile Mear(モ・ギレ・マー)

この歌、ゲール語の勉強を兼ねて歌詞を覚えようとしているが、なかなか大変だ。日本で紹介される場合、題名は、「素早き戦士」とかされているが、直訳ではない。それらしく訳すと、「我がつかの間の輝き」になるだろうか。

私の=mo(フランス語ぽく鼻に響かせる感じ) 、輝き=gile→moの後につくから発音上、ギレが柔らかくなりghile,イレ(正確にいえば)、mear=マー(最後に微妙にルがつく感じ)素早い、これが題名の意味。

2016.06.03 追記 gileの意味について

この言葉は、正確には、gille 。古いアイルランドで、”武器を持てる年齢に達した若者”、スコットランド・ゲール語で”若者”の意味。Tigh Mhíchíl このブログでご指摘いただいた。すると、「素早き戦士」は、適切な訳語といえるだろう。ご指摘に感謝いたします。

多くの例では、モ・ギレ・マーに聞こえるけど、ゲール語の正確な発音では、モ・イレ・マーかな。たぶん。

この歌は史実に由来するが、とても政治的でもある。かのケルティック・ウーマンのアルバムにも収録されているけれど、歌詞をオリジナルから相当に変えているのもそのせいかも。

かつてのステュワート王家を支持する人たち=ジャコバイトの歌だからである。これはいわゆる名誉革命を認めない立場だ。ある意味、現イギリス王家の正統性を否定する意味合いがないわけではない。

内容的にはあるヒーローの歌であるが、その武勲というより、女性が去ってしまったヒーローをしのぶ形になっている。ヒーローとは、ボニー・プリンス・チャーリー(チャールズ・エドワード・ステュワート)のこと。

ロマンあふれる話である。1745年7月、フランス育ちの美形の王子様は、ステュワート王家の復興を果たすため、最果ての島に上陸した。そして、屈強なハイランダーたちを従え、一路ロンドンに向け攻め上るが、ロンドンを目前にし、夢破れて敗走する。その最後の戦い、これがスコットランド史上、その凄惨さで名高いカロドン・ムーアの戦いである。

迫り来る追っ手から、王子を助けたのが、この物語のヒロイン、フローラ・マクドナルドである。その舞台となるのは、最果ての島、スカイ島であった。この際、女装してもバレなかったそうだから、どんな容貌の王子であったか推測がつくだろう。

王子はフランスに逃げ延びるがその先はいただけない。自分のために死んでいった者たちに罵声を浴びせながら、すさんだアル中男として一生を終えたようだ。おまけにこの反乱の失敗によって、ハイランド地方は徹底的に蹂躙されてしまい、独自の氏族社会も壊滅してしまった。かくも、ロマンの代償は大きかった。でも、歌というのはすごい、彼は歌の中では今もヒーローであり続けているからだ。

で、フローラはどうなったか。いや彼女こそ輝いていた。逮捕されロンドンまで送られたが、国王を前にした尋問にも動じなかった。自分の「義」を誇り高く述べ、「彼が陛下であっても同じことをしました」と応えたという。このせいあって無事放免されている。

コンテンツはスコットランド、歌われる場所はアイルランドなんて変だが、ステュワート王家がカトリックを支持していたことが大きいといえるだろう。イギリスの王権がプロテスタントを支持したことによって、どれほどの被害がアイルランドに及んだか、これを知るとこの背景がわかりやすくなる。

このように、アイルランドの歌の中には、歌う場所を考えるべき歌もある。そこがスコットランドならまあ、いいだろうが、イングランドなら穏やかではないかも。

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