千葉大生殺害事件について(凶悪犯罪者の認知世界)
報道によると、そのきっかけは拍子抜けするほどシンプルだった。マンションのごみ捨て場が彼女の部屋の下にあり、侵入に際し足場の都合がよかったから。こんなことで命を奪われるなど、たまったものではないが、多くの凶悪犯罪の誘引はこのように単純なものである。
これを犯罪者の視点、認知世界で考えてみると、それは一般の人のそれに比べ見えている(感じている)ものが極端に少なく、また偏っているといえる。だから、犯罪を説明するうえで、「残虐な心」とか、+αの要因を探すことよりも、何が欠けているのかと考えた方がいい。
彼女の苦痛、家族の悲嘆、自身に待つ過酷な刑罰など、本人にはさして見えない。だから大胆な犯行も可能になる。こういった認知世界を想像することはなかなか難しいが、強い葛藤や深い悩みも生じない経験世界に生きているということだ。
この犯罪は、刑務所を出て1月後の犯行と報道されているが、刑務所の中でも行状も悪かったとはいえないだろう。おそらく、これまで窃盗など財産犯の常習者で、与えられた規律、作業に従順に従う目立たない受刑者であったろうと思う。
殺意を否認しているそうだ。弁護するとすれば、このあたりしかないのだが、客観的に見れば、否認しようがない。ただこういった本人の主観の中で明確な「意」なんてものがあるのか、ないのか疑わしいように思われる。近代的な刑法は、自律した個人を想定しているものの、これは理論上の概念であり、よほどの確信犯でないかぎり実際のケースにはぴったりこないだろう。
この事件の裁判員になっとしたら、この点だけでも大きな心理的負担になる。たぶん、突っ込んだ質問をしてものれんに腕押し状態ではなかろうか。それに加え、死刑か無期という難題もある。強盗殺人とすれば、この二つの選択しかないからだ。
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