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ダニー・ボーイのこと

自動車の運転中にダニー・ボーイを聞くことを心がけたおかげで、歌詞を暗記することができた。今夜は、ダニー・ボーイについて少し書いてみる。

この曲は、おそらく日本も含めて世界で最もよく知られたアイルランド民謡である。ただし、微妙な点が数多い。

別名ロンドンデリー・エアー。ロンドンデリーとは北アイルランドの地名であるが、この曲が採取された場所である。で、問題はここから始まる。

当然ながら、北アイルランドは政治紛争の場だ。最近は融和が進んできたようだが、プロテスタントとカトリックがにらみ合っている。外国人である日本人には関係ない?いえ、ロンドンデリーという呼び名はプロテスタント系が使うらしい。カトリック系はデリーと呼ぶようだ。現に地図の表記も二種類ある。

ロンドンデリーと言うと、それだけでプロテスタントに荷担していることが推定されてしまうおそれがある。こんなわけでこっち曲名はちょっと気をつけた方がよいだろう。実際、アイルランドでもダニー・ボーイの方が曲名として一般的だ。

第二に微妙な点、アイルランドの伝統音楽家はこの曲を演奏したがらない!アイルランド音楽の楽譜集にもまず出てこない。しかし、外国人向けお土産CDの定番曲ではある。

非常に屈折した曲だ。そもそも、アイルランドの曲なのかといえば、それは本当らしい。歌詞がつけられ突然アメリカで爆発的に有名になったようだが、アイルランド本土ではほとんど知られていない曲だったそうだ。

本来、伝統曲には、時間的、地域的な広がりがある。このため人から人へと伝えられるうちに、個性の角が取れて丸くなるとか、違うバージョンが派生するとか、そういったことがおきるものであるが、この曲はユニークで個性が強い。個人的に作曲されたそのままの曲といったらよいだろうか。

完成度が高く、民謡的な土臭さがないといえば、そのとおり。アイルランドの最も伝統的な歌の様式、これをシャン・ノースと呼ぶが、実に朴訥とした歌唱法だ。ダニー・ボーイはとても劇的な抑揚のある曲であるため、とてもシャン・ノース向きではない。

実際に歌ってみるとよくわかる。一般の人なら、さびの部分のがくんと上がる高音に苦労すると思う。このとき、オペラ家歌手の真似みたいなことになるはずだ。僕などは、一人で歌ってもこの部分が気恥ずかしいと感じてしまう。

とはいえ、いい曲には違いない。僕は東京の中野サンプラザに通ってアイリッシュダンスを習っていた。このビルの前の広場には時計付きのモニュメントがあって、決まった時刻に流れる曲がダニー・ボーイだった。もちろん、アイリッシュダンスとはまったく無縁に、日本でもおなじみのあの曲としてそれは流れていたのである。

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