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書評:江戸の妖怪事件簿 田中聡著 集英社新書

柳田國男やW.B.イェーツの残した記録には、当時の庶民が遭遇したリアルな怪異が記録されている。私たちにとってリアリティの感覚に大きな断層を感じさせる記録だ。この本では、江戸時代を背景に、”リアルな”妖怪事件を真正面から取り上げ、この問題をさらに深く考察している。

こんな話が残ってます的な民俗誌としても面白い。しかし、おのずとリアリティとは何かと考えさせられるだろう。村を挙げて妖怪の襲撃に対抗した公な記録が圧巻だ。村人たちは「本当は」何を見たのか、現代人の感覚では了解することがとても難しいと感じるはずだ。少なくとも筆者はこの断層まで読者を導いてくれている。その向こうを分析するとなると、知識社会学や精神医学などの領域になるはずだ。

しかし絶対的な相対主義の立場に立つと、それらの学問領域も、しょせん一部の現代人が使う理解のツールではないか、と考えることができるだろう。それどころか、現代人のリアリティ感覚だって本当は脆弱なのでは?

最近、テレビ番組オーラの泉が終了したようだが、死者が生者の背後に立ち、影響を与え続けていることを確信する人は多いと思う。つまり霊魂(幽霊?)実在説になると思うが、妖怪や妖精を信じる人は少ないはずだ。

ところが、この本によると、幽霊なんて断固存在しないと考えながら、妖怪の存在を信じていた人が江戸時代には多くいたらしい。このリアリティの根拠の違いって何なんだろう?なかなか知的鍛錬の機会を与えてくれる本だ。

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