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2009年7月

セミのこと

ニイニゼミから、アブラゼミに鳴声の主役が交代するといよいよ夏が本番になる。

閑(しずか)さや岩にしみ入る蝉の声

ところで、最近の日経新聞によると、斉藤茂吉と小宮豊隆が、芭蕉の例の句について論争したことがあったそうだ。ニイニイゼミかアブラゼミか・・・。その結果、斉藤茂吉のアブラゼミ説が負けてしまったという。

句の解釈も必要だが、芭蕉が出羽、立石寺を訪ねたのは、太陽暦の7月初めころだから、季節的にはニイニイゼミの方が妥当らしい。

ただ、僕のイメージでは、どちらでもない。ヒグラシが閑(しずか)さを演出するセミのように感じる。物悲しく、金属的なヒグラシの鳴声なら、岩にもしみとおりそうだ。実際、立石寺のような山深い環境ではヒグラシも鳴いていると思う。7月初めには難しいかもしれないが。皆さんは、この句にどんな種類のセミを想像しますか。

斉藤茂吉はセミが好きだったが、小泉八雲もそうだ。

八雲は、地から生まれ、王者のように露を飲み、唄を愛して苦しみをしらない、神々からも愛される存在と、セミたちをたたえた。

彼の場合、ギリシア系でもある自身の出自と、日本人の虫好きを重ね合せている点がおもしろい。大方のヨーロッパ人と異なり、ギリシア人は、日本人と同様に、虫の音を観賞する文化を持っているのだそうだ。

テイカカズラのこと

少し遅く家を出たら、近所の家のご婦人に挨拶され、生垣の植物の話題になった。

その生垣は、毎年優雅な香りとともに黄色い花を着ける。ジャスミンの仲間だと知っていたが、テイカカズラとは気がつかなかった。言われてみればそうだった。普段はまれに山奥でしか目にしないので、庭のフェンスに這わせた生垣になっていると、場違いで気がつかなかったのだ。意外なところで、意外な人に会うようなものだ。

日本の野生植物も、洋風のアレンジをすればまた違った趣になる。園芸的にみても、面白いと思う。アイルランドでも、日本産の植物が園芸植物として活躍しているが、アジサイの類などその例だろう。梅雨時、長靴、カタツムリなどの連想から程遠いと感じる。ほぼ四季咲きで、秋の彩りの一つにもなっている。

テイカカズラがアイルランドをはじめ、ヨーロッパの園芸界に受け入れられているかどうか僕は知らない。けれど、花と香りに加え、「日本で最も偉大な詩人の一人にちなんだ名前がついてます(藤原定家)」といえば、さらに箔がつくかもしれない。

日食のこと、あるいは科学的思考の基盤について

先日、皆既日食があった。仕事していたら見忘れてしまった。

日食について思うこと、それは正確な予測ができるということだ。天体の運行など超マクロな自然界のできごとは、そういうものなのだろう。数字に置き換えた予測が、そのまま現実のものとなる。同じく自然現象でいうならば、天気予報。こっちは、何時から雨が降る、とまでは予測できないが、それでもかなり信頼できる。

それに比べ、地上の人間界の出来事は、相当に難しい。たとえば、日経平均。前日のニューヨーク市場を知れば上がるか下がるか、おおよその予測がつくものの、終値を言い当てることなどとてもできない。

古代のギリシャ人たちは、こんな風に考えたようだ。

天体の運行に比べ、なんと、この地上の出来事はあてにならないのだろう。天に昇るほど、マトモな(イデアな)世界になっていくのではないだろうか・・・

哲学的にいえば、本当のもの=イデアは、この地上にはなく、この地上にあるものは粗雑なコピーみたいなもの、となる。

教科書的にいうと、コペルニクス(=近代科学の先駆)は、頑迷なキリスト教会に逆らって天動説を唱えたとされる。そこには、観測を重視する冷静な科学的、客観的な思考があったのだと。しかし、科学史の検証によれば、地動説派もそれなりのデータの蓄積があり、理論的には、天動説とも対等のレベルにあったそうだ。つまり、両者とも天文学的観測をそれなりに説明することについては優劣がつかなかった。そもそも、当時は、宇宙から地球を見ることができなかったのだから。

コペルニクスの確信の背景には、古代ギリシャ的な思考があったのではないかといわれる。それは、地上(=地球)より、太陽の方が格が上である。したがって、太陽が地球を回るのではなく、地球が太陽を回ると考えるべき、という発想だ。たぶん、単なる観測と実験の積み重ねだけでは、科学は成立しないのだろう。その発想の基盤を掘り下げてみると、より実り豊かな鉱脈があるに違いない。

ルネッサンスとか、科学革命といった歴史的できごとは、人間の進歩のシナリオから離れてみた方がよいように思う。ニュートンが錬金術師であったと驚くより、科学の始まりは失敗した錬金術であったと考えた方がむしろ正しい。

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