インフルエンザについて
インフルエンザが流行しているので、今夜はインフルエンザについて書いてみよう。
この言葉の語源は、英語のinfluence(影響)と同じだ。ラテン語へたどると、influxi(流れ込むこと、影響)にいきつく。なにか別なところからこっちの方へと力が働いているイメージがこの言葉の本質なのだ。
では、どこからその力が来るのか、それは宇宙の星々からである。つまり、昔の人々は、天空の出来事がこの地上の出来事に影響を与えていると考えていた。インフルエンザ=疫病の流行もその一つと解釈されていたのだ。
確かに、今風に考えれば、太陽の黒点の増減が地球の気候に影響を与え、人類史のエポックになったという話はある。だがこれは、本来もっと壮大で魔術的な発想である。それは、新プラトン主義の哲学を背景とし、ヨーロッパ・ルネサンス期に絶頂となったものだ。当時にしてみれば、天文学者が医師を兼ねることが当然のことであった。
残念ながら今の私たちは、このようなコスモロジカルな、いわば宇宙との共感を感じるような感性が相当に退化している。一般の文明化(ほんとうか?)した人間は、今夜の月の形を気にしていないだろうし、満天の星空を見上げた経験さえもあまりないだろう。しかし、この感性に関連したものとして、なんとか占星術は現代にも生き残っている。この論拠には、インフルエンザを天空からの悪い”影響”と考えたような昔の人々の発想と同質のものがある。
インフルエンザウイルスをはじめ、ウイルスの形態は実に幾何学的だ。小さなウイルスのタイプになると、シンプルな正20面体が主流になる。プラトンは、この宇宙の根本に数学的、幾何学的原理があることを確信していたが、ウイルスの形態を知ることができたとしたら大いに満足しただろう。とはいえ、この宇宙的な単純さがウイルスの脅威の源でもある。
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