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脳科学と刑法

最近、脳科学が話題になっている。このブログでも話題にしてみよう。まず手始めは、刑法と脳科学。

私たちの心の働きは、人間の臓器である脳に関連している。これは、全くそのとおりだ。ただし、脳=心といった野蛮な発想には同意できない。これが私の基本的な主張である。そもそも、物質としての脳と、経験の主体としての心は密接に関連しているとはいえ、全く別次元の存在なのだから。これは、自由意思の問題にも関わる。

今日は、刑法を題材に少し考えてみよう。毎日報道される凶悪犯罪。これは、人間の行動の類型なのだから、当然に脳内の物理的働きの結果である。この働きは、生理学的な化学反応と言ってもよいだろう。生理的な化学反応、たとえば、神経伝達物質がニューロンの間で電気的な信号を媒介するようなこと、これがとてつもなく複雑な形で脳内で起こっていると考えればいい。ただし、あくまで物質界の出来事なのだ。

凶悪犯罪者の脳内で起きていることと、その他大多数のまっとうな人たちの脳内で起こっていることは、物理的な、すなわち必然的な出来事である。当たり前のことだが、化学的な反応に善も悪も存在しない。そして責任も。

しかし、刑法が想定する人間とは、自由な意思を持つ人間だ。だから責任が問える。重大犯罪の被告人に心神喪失で無罪、なんて判決が下ると、「とんでもない、こんな悪いヤツが何で無罪なんだ!」という話になるが、脳=心と全く信じるならば、もともと責任の所在なんてこの世のどこにもないのだ。やっぱりそれは変、と考えるのは、私たちの日常経験のレベルだと思う。

とりあえず、私たちの日常経験の世界に納得してみるなら、脳と心は分けて考えよう。これは、哲学上、物心二元論と呼ばれる。哲学者K.ポッパーはさらに第三の次元を考えたが、いずれ題材にしてみたい。

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