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2008年10月

ゲド戦記 炉辺の光景

また彼に会うことができた。最近、ゲド戦記の第一巻を原書で読み始めたからだ。

ゲドは、例のアニメでは、もったいぶったことを言うつまらないおじさんだった。しかし、この第一巻では、少年~青年ゲドに会うことができる。もしあなたがアニメだけのゲドしか知らないのなら、ぜひ、本の中のゲドに会っておいた方がいい。なぜなら、人生でとても大切なことを教えてくれると思うから。

最初に読み、ずいぶん経ってから読んでみて気づいたことがある。それは、炉辺の持つ意味だ。炉辺は重要な転機を暗示する状況設定だと思う。トールキンの「指輪物語」でも、この長大な旅の始まりは炉辺だ。この時、フロドはガンダルフから運命を授かることになる。

また、ゲドがその魔力を認められるのは、村のまじない師の炉辺だった。破滅の瀬戸際から立ち返り、師匠オジオンから進むべき道を示される場面も、親友であるカラスノエンドウ(Vetch)と最後の対決に向かう決断も炉辺である。

西洋では、暖炉があり、日本には囲炉裏があった。元来、このような場所は、個人の経験を越えた智慧の集積する場所でもあると思う。たとえば、神話や民話は、火を囲んだ無数の心が創った織物なのだ。火を前にして語られる言葉は深く、心の芯まで届く。

現代の文明化された生活様式の中で、「生の火のある場所」を失いつつあることは重大な損失だと思う。そこは、人と人との絆が確認される場所であり、また言葉の力が最も発揮される場所でもある。心が道に迷ったらそこに還ればよかったのだ。

金融不安とアイルランド

このところ、アメリカ発の金融不安で日経平均もずいぶんと下落した。

思い出すことがある。問題の質はかなり異なるが、2001年9月11日のころもこのような急激な下落を見た。もとより世界的に株式市場が下落していたが、追い討ちをかける形で同時多発テロが発生したのだ。しかし、しばらくしてバブル崩壊後、長い低迷を続けていた日本の株式市場は底打ちし、上昇に転じた。

日本の株式がこのどん底にあったころ、アイルランドの年金機構は、日本の株式を買い集めていたという。これはすばらしいバーゲンセールだったはずだ。アイルランドはのどかな田舎の国であるが、一方、このようなしたたかな一面もある。日本人が見捨てた日本株で、自国の国民の未来を保障していたのだ。

今回の金融不安はまだまだ先が読めない。しかし、明けない夜はない。有名な投資の格言もある。

「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」

ケルトの組みひも模様のように、このサイクルは回り続けていくもの。新しいサイクルはいつ始まるのだろう。

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