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カール・レーヴィットのこと

最近の日経の夕刊に、哲学者の木田元先生の記事が載った。

木田先生には、少しご縁がある。中央大学での木田先生の最終講義に出席したのはずいぶん前のことだ。

今回の記事は、フランス革命とヘーゲルの歴史哲学に言及があったが、先生はこういった進歩史観に批判的なようだ。ヘーゲルの過ちがマルクス主義に継承されたことが暗黙のうちに示唆されている。

歴史はある方向に向かって進歩しているのか。学校で習う歴史教科書には、進歩していく歴史が当然の前提としてバックにある。この意味、歴史は単なる事実の羅列ではない。明らかに一つの立場に基づいているのだ。人類史は理想、たとえば自由とか、が実現されていく筋書きのあるドラマとして記述されている。

カール・レーヴィット(K.Lo"with)は、私の好きな哲学者だ。彼の哲学の手法は、哲学を社会学的に分析する視点にある。つまり思想が生まれる社会背景から、既存の哲学を批判する方法を取っている。

そもそも歴史に意味があるという発想、それはユダヤ・キリスト教の根幹にあるが、西洋の哲学者ばかりでなく、多くの日本人は、自分が当然にこの「神学」を受け継いでいることに気が付いていない。

この神学は西洋の哲学に受け継がれ、宗教を否定したマルクス主義によって最も受け継がれたことは、哲学史上の奇観だ。もちろん、リベラルな立場も大差ない。

本来、明治維新の思想的基盤は、神道原理主義と、王政復古にある。この意味で歴史の反動である。ところがいつの間にか、進歩する人類史のエポックとなってしまった。日本は進歩する文明社会の一員になった、これが教科書的歴史解釈である。

そもそも封建社会は文化水準の低い、野蛮な社会なのだろうか、ともかく徳川幕府は人類史上まれに見る長い平和を実現した。ところが明治政府になって以来、ただの平民まで遠い外国の戦場に駆り出されることになったのではないか?平等な社会あるいは国民国家というものは、戦争を遂行するうえで、まことに都合のよい体制である。これは進歩だろうか。

当たり前を疑ってみよう。進歩する歴史、この前提を疑ってみると、新しい知的冒険の視野が広がるだろう。

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