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2008年5月

書評「荒蝦夷」熊谷達也著

古代日本の幻の民エミシ(蝦夷)。今も東北地方に残るアイヌ語系の地名やマタギ言葉に彼らの残光が残っている。アイルランドやスコットランドにもゲール語の地名が残っているが、彼らはケルト人よりさらに幻かも知れない。民族として確立し切れなかったからだ。

この小説はエミシの英雄アテルイと、ヤマトの将軍田村麻呂の対決前夜の東北が舞台である。エミシの部族社会と、ヤマトの中央集権社会との激突といえば、ケルト人とローマ帝国の抗争にも同じモチーフがある。ケルト人諸部族を統合した英雄ウェルキンゲトリクスは、エミシのアテルイにそのまま対応する。

この小説の醍醐味は先の読めない政治的権謀術策にある。これが面白い。推理小説を読むように楽しむことができる。そしてエミシに情緒的肩入れは直接的ではない。ヤマトVSエミシといった二項対立ばかりではなく、エミシ間の部族闘争もまたすさまじい。つまり、「強者に挑む人々の哀歌」みたいな感傷はない。

乏しい歴史的資料からエミシの部族社会を再現した著者の力量にも脱帽する。文化人学的知的楽しみも味わえるだろう。ただし、おぞましい略奪、処刑のシーンのリアリティも含む。この点、奇麗な話ではない。かなりショッキングである。

しかし、このおぞましさを背景として、アテルイと田村麻呂の英雄性は清清しさを際立たせる。素敵(ステキ)とはこのことである。若き両雄の邂逅のシーンは鮮烈だ。

田村麻呂=ヤマトとはそのままいえないことに留意したい。田村麻呂の一族は渡来系である。つまり彼らにも、日本という地に確たる基盤を作ろうと危ない橋を渡る事情がある。諸族入り乱れた当時の日本の姿があるのだ。

アテルイと田村麻呂、この宿命の対決がNHKの大河ドラマになることはありえないだろう。通俗日本史を超越したドラマであるから。でも、本当に日本という国の成り立ちを知りたいなら古代東北は無視できないと思う。

ネパールの笛

最近、昼休みは職場近くのインド・ネパール料理店で昼食を食べることが多い。

いつもエスニックなBGMが流れている。今日は軽快で暖かい笛の音を聞いた。かなりアイリッシュフルートに似ている。

マスターに尋ね、CDのジャケットを見せてもらった。ネパールフルートのCDである。この笛、材質は竹だ。といっても、日本の篠笛などにくらべずっと、アイリッシュに近い。奏法もにている。マスターによると、「バースリ」と呼ばれているそうだ。初めてネパール語を学ぶことができた。

最近アイリッシュフルートを吹いていないことを思い出した。そろそろ練習を再開しよう。

アイルランドの花

アイルランドの野の花が自宅のベランダで咲き乱れている。

花の種の詰め合わせを土産物屋で買ったのだが、春先から少しずつ咲き出した。まだ咲いていないものも多く、すべてで20種近い。

アラセイトウ(ストック)?、ヒメキンギョソウ、ケシ、チドリソウ、デイジー、ヤグルマソウ、ムギセンノウ、フクロナデシコの類、ワスレナグサ、ノコギリソウ、レースフラワー、ハルシャギク?など確認できたが、まだ判定できない種類が多数ある。

アイルランドの野の花といっても、固有種はたぶんない。むしろヨーロッパの花というべきだろう。日本に帰化しているものも多い。昨日甲府市に行ったが、荒川の川辺に全く同じヤグルマソウが沢山咲く様子を見た。まあそんなものである。明治以来、日本に帰化したヨーロッパの野生植物は数多い。

これらの野生植物の多くは園芸植物の元祖でもある。たとえばストック、春の花壇の主要メンバーだが、この原種とおぼしき花を確認できたことは興味深い。デイジーもそうだ。以前、静謐な教会の庭の芝生に一面のデイジーの咲く様を観たことがあるが、改良されないデイジーは無垢な可憐さがある。私のマンションのベランダでやっと一輪咲いた。種を採取し、来年はもっと咲かせてみようと思う。

詰め合わせの中にアイルランドの国花、シャムロックがなかったのはなぜだろう。鑑賞価値の低さだろうか。とはいえ、シャムロックは日本産のものを毎年咲かせている。今年は絶好調だ。種をほしい方がいれば差し上げよう。

アイルランドの水棲昆虫

こんなテーマのブログを書いているが、何を隠そうこの私、水棲昆虫が大好きである。

タイコウチという昆虫をご存知だろうか。おなじタイコウチ科の昆虫にはミズカマキリがいる。遠縁ではタガメ。これはかなりメジャーだと思う。

連休中、愛知県の実家に帰ったが、近くの公園の森に湧き水があり、ここにはヒメタイコウチが棲息している。この昆虫、かなり限られた環境でしか生きられず、水棲昆虫の中ではかなりレアな部類に入る。久しぶりに探してみたら発見できた。小学生以来の付き合いなので、実になつかしい。中学生の時、なんとか繁殖にも成功できた。

その名の通り、タイコウチの小型版である。特徴は尾のような呼吸管である。タイコウチは4cmほどもあるが、ヒメタイコウチのそれは5mmに満たないだろう。つまり、水棲昆虫といっても、ごくごく浅い水域で生活しているのだ。泥の上で生活しているといってもいい。

タイコウチはアイルランドにもいる。たぶん1種類しかいない。ウォータースコーピオン、水サソリなんてスゴイ名前がついている。興味深いのは、日本のタイコウチとヒメタイコウチの中間サイズであることだ。

アイルランドでこのウォータースコーピオンを見たときは、似て非なる自然の造形にちょっと感動した。ちなみにアイルランドにタガメはいないようだ。どちらかといえばこの虫、南方系だと思う。東南アジアの一部では大量に棲息し、食用にもなっている。日本のイナゴの佃煮を思い出せばよいが、日本のペットショップでは1匹2500円ほどで売られているのだから、実にもったいない?

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