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愛の博物学

初夏になった。彼らが戻ってきた。彼らとはツバメたちである。

去年巣があったあたりにまた巣を作っている。このツバメは去年のカップルかといえば、たぶん違うだろう。雛が巣立ち、子育てが完了すれば、鳥たちのカップルは解散となることが通常だ。それでもこの協力関係にはほほえましいものがある。

鳥類と異なり、子育てについて交尾以上の雌雄のパートナーシップをほとんどの哺乳類はもたない。雌雄の愛が交尾以上のものだと定義すれば、ヒト族を除き、地球上の雌雄の愛はほぼ鳥類が独占しているといってもいい。

科学の視点からすれば、人間外の生物の「愛」を語ることは、擬人化しているのではないかという非難があるかもしれない。先のツバメの例であっても「所詮、刺激と反応に基づく生得的な行動の連鎖である」といえないこともない。

しかし、アジサシ(Tern)に確認された例は興味深い。もともとこの海鳥は雄が雌に採った魚をプレゼントする求愛行動で知られているが、特定のカップルが毎年巣づくりする例が確認されている。さらにこのようなベテランカップルの雛は、出来立てカップルより生存率も高いという。つまり、この愛の絆は、生存競争上有利に機能しているわけだ。

また、雄アジサシは特定の雌アジサシを選びうることが重要だ。繁殖期の度ごとに同じパートナーを選ぶということは、固体の識別がなされていることを意味する。この点、愛の第一条件はクリアだろう。

なぜなら「博愛」という別物の愛を別にして、愛とは”特別な選択”だから。良くある男の失敗は、「君が一番好きだ」とくどくことである。多くの場合女性から「私だけではないの?」と切り返されるだろう。この例は「源氏物語」にもあるし、アニメ「うる星やつら」の主題歌にもある。

以上は動物行動学。以下、アイルランドに関したおまけ。

日本に棲む二種のアジサシ(ターン)=アジサシ(Sterna hirundo)とコアジサシ(Sterna albifrons)はアイルランドにも生息している。ただしアイルランドにはもう二種類いる。

今日のテレビで、コアジサシの保護活動を放映していたが、多くのみなさんがこの鳥のことに関心をもってくれることを私は望んでいる。

アジサシが主人公の美しい絵本もある。「リトル ターン ブルック・ニューマン作、五木寛之訳、リサ・ダークス絵 集英社」はお奨めだ。

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