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2007年9月

書評 「スコットランドケルト紀行 ヘブリディーズ諸島を歩く」

この本は、武部好伸著、彩流社から出版されています。

最果てのヨーロッパ、スコットランド北西のヘブリディーズ諸島について書かれた本です。

私は取材の仕事で、ヘブリディーズ諸島のうち、スカイ島を訪れたことがあります。ヘブリディーズ諸島の入り口に過ぎませんが、すばらしい島でした。この本の中では霧の島として紹介されていますが、ほかにも、疾風の島ルイス、白砂の島サウス・ユイスト、岩山の島など、特徴のある島々が点在し、観光客向けでなくキルトが着用され、今なおゲール語が日常的に話される地域です。

この本はこれらの島々を旅した貴重な記録であり、手つかずの「ケルト」が息づいている様子を詳細にレポートしています。読み進めるにつれ、冷たい潮風を感じ、バグパイプの音が聞こえてきそうなとても感覚にとらわれます。

アイルランドのそのまた向うへと、指針を示すお奨めの本です。

書評 「アースダイバー」

この本は、中沢新一著 講談社から出版されています。

彼独特のアナロジーを掘り下げる手法によって、縄文以来の東京の心の古層にたどりつくという趣旨の内容です。比喩として、大地の記憶に飛び込むということですね。ネーミングはインディアンの神話から採っていますが、気が利いています。

私としては、ちょっと躊躇するいつもながらの論理の展開ですが、極度に人工化された東京の市街地の下に、どろどろとした太古的な情念を感じ取る感覚を呼び覚ましてくれます。

仕事で、渋谷の神泉駅に行くことがよくあるのですが、この地名は以前から妖しい、と思っていました。この本で明らかになったことは、付近が火葬場であったこと、この谷間に泉が湧き、聖(ひじり)たちが、弘法湯と称する癒しの湯として泉の水をふるまっていたことです。中沢新一ファンでなくても、このような、東京の謎解き散策にはお薦めの本です。

書評 「アイルランド歴史紀行」

アイルランドを旅しようとするなら「地球の歩き方」をお奨めします。これは定番ですね。もう少し踏み込むなら第一歩はこの本です。

筑摩書房 「アイルランド歴史紀行」 高橋哲雄 著

アイルランドに関わる本なら数ありますが、多くは翻訳本です。あなたが日本の文化を基本にもち、この基盤の上にアイルランドに関わろうとするなら、この本がまさにうってつけです。

歴史紀行と題されていますが、300ページの中に文学、映画、経済、政治、、食文化、民俗、宗教といったアイルランドのほとんどすべてが詰まっています(残念ながら音楽はなし)。これに日本とのかかわりという光を当てているのが本書です。アイルランドは疎遠な国と思われていますが、平均的な日本人ならどこかにアイルランドとの接点が見つかるでしょう。地理と国民性について、旅行前のプレリサーチにもなります。ただし、資料は少し古いです。最近のアイルランドはもう少し「普通の国」になっています。

聖者と学僧の島

これは本の題名です。「聖者と学僧の島」とは、すなわちアイルランドのことを意味しています。翻訳本で、著者はトマス・カヒル(Thomas Cahill)、翻訳は森夏樹という方です。そして青土社から出版されています。

大変骨太な本です。原題が強烈です。How the Irish Saved Civilization 直訳すれば、いかにアイルランド人は文明を救ったか となります。アメリカの社会でアイルランド系の人たちは白人の中でも下に置かれている、とよく言われています。その意味でこの題名は極めて挑発的です。これほどアイルランド系の自尊心をくすぐる表題もないでしょう。

内容は、ローマ帝国の末期から始まる歴史書ですが、ケルトの民俗・神話、詩や中世思想への言及も多くなされています。しかし、中核となる論旨はとてもシンプルです。

ローマ帝国の滅亡によりヨーロッパは暗黒時代に突入した。しかし、ローマの支配下になかったアイルランドはこの混乱を免れ、ローマの文化を保護、吸収し、暗黒のヨーロッパに再度文明をもたらせていった・・・と、こういうものです。

具体的には、カール大帝の神聖ローマ帝国、これが文字どおり文明の再興、中世の始まりとなるのですが、その影にはアイルランド人の学者たちが多大な貢献をしたという例があげられます。この時期がアイルランドの黄金時代といってもよいのでしょう。

ちなみにこのブログの題名の中にある、「エリウゲナ」はこの黄金時代に活躍した最も著名なアイルランド系哲学者の名前から採りました。

オーラの泉とBGM

アイルランドの伝統曲が、テレビのBGMに使われることは意外と多いものです。多分一番よく使われる曲は、「サリー・ガーデン」だと思います。養命酒のCMではギターの演奏ですね。

今日はちょっとサプライズがありました。「オーラの泉」というオカルトな番組がありますけど、今日のゲストは武田鉄矢でした。この番組の例により、しんみりと身の上を話す場面に、オキャロランの曲が少なくとも2曲使われていました(オキャロランとは、アイルランドで最も有名な作曲家、ハープ奏者です)。とりわけ感傷的なものです。

最初のものは、ロー・ホイッスル、次のものはハープによる演奏でしたが、武田鉄矢とアイリッシュという取り合わせにはなかなか意外性があります。 曲名まで、すぐには分からなかったのですが、練習したことのある曲でしたので、楽譜で確認ができました。 Bridget Cruise (Third Air) とIsabella Burke だと思います。

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